乙字湯の効果・適応症
乙字湯は、体力(胃腸)中程度の人の次の症状に適しています。
便秘や軽い出血、肛門周囲に痒みや痛みを伴うような、症状が激しくない、キレ痔、イボ痔。
成人では、1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。
キレ痔、イボ痔への乙字湯の効果
軽度の便秘傾向の人の痔の第一選択される漢方です。
便通を促す大黄が入っているため、消化管の運動が促され、便通を促す効果がありますが、その働きは弱いので、便秘がない人でも乙字湯を飲んだ後に下痢や腹痛がなければ飲むことができます。
他剤との使い分けでは、症状が顕著で体力が充実した便秘がある場合には大黄牡丹皮湯、比較的体力があるタイプでは、便秘がある場合は大柴胡湯、のぼせ傾向があって下腹部に圧痛がある場合は桂枝茯苓丸が適しています。
体力が低下している場合では、出血がみられる場合は、脱肛の傾向がある場合は、痛みが激しいときは当帰中建湯、倦怠感が強い場合は補中益気湯、出血が見られるときには芎帰膠艾湯が適しています。
乙字湯の副作用・証が合わない場合の症状
副作用
乙字湯は、間質性肺炎が生じる可能性があります。
その初期症状である発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。とあります。
この初期症状を感じるときには、速やかに乙字湯の服用を中止して、ただちに医師へ連絡するということを覚えている必要があります。
乙字湯には、甘草が含まれています(1日量3包に2.0g)。そのため、偽アルドステロン症を起こす可能性があります。主な症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。主成分であるグリチルリチンは多くの食品などにも含まれているため、摂取量に注意する必要があります。
肝機能障害や黄疸が現れることがあります。その他、過敏症、食欲不振、下痢、腹痛などが起こる可能性があります。
乙字湯に含まれる大黄には、子宮収縮作用があり、早流産の危険があることから、妊娠・妊娠の可能性のある婦人には不適になります。また、授乳中の婦人に使う場合は、母乳中に移行して乳児の下痢を起こす可能性があるため、注意が必要です。
証に合わない場合
大黄、当帰が含まれているため、食欲不振や悪心、下痢などの可能性があるため、著しく胃腸が虚弱だったり、食欲不振がある場合は注意が必要です。
大黄が含まれているため、下痢・軟便がある場合、悪化する恐れがあります。
乙字湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか
当帰(トウキ)、柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、升麻(ショウマ)、大黄(ダイオウ)の6種で構成されています。
軽度の便秘傾向の人の痔の第一選択される漢方です。
便通を促す大黄が入っているため、消化管の運動が促され、便通を促す効果がありますが、その働きは弱いので、便秘がない人でも乙字湯を飲んだ後に下痢や腹痛がなければ飲むことができます。
当帰・柴胡・升麻が痔に対しての鎮痛作用を発揮し、升麻が肛門部の潰瘍発生を抑えていきます。大黄には、便通を促すだけでなく抗菌作用もあります。構成生薬のうち5種類に炎症を抑える働きもあり、効き目を発揮します。
乙字湯のまとめ
乙字湯は、痔のファーストチョイスになります。症状が軽度のときに対応したいのであれば、もともと食欲不振や下痢がない場合には使いやすい方剤だと言えます。
ただし、便秘があって痔になる可能性がある妊娠中の女性には使うことができません。
女性が用いる場合にはまずその点に注意が必要になります。