糖質

栄養管理に使用される糖質には、体内の栄養源の基本はブドウ糖の代謝産物であり肝臓や筋肉に貯蔵されるグリコ-ゲンです。特に、脳(神経)と赤血球などでは唯一のエネルギ-源でもあります。以下に、各糖質の利点・欠点を挙げます。

 

果糖(フルクト-ス):果物や砂糖の成分として日常摂取している糖質であるが、血液中にはほとんど存在しない。投与された果糖は、主に肝臓で代謝され、血液中からの消失はブドウ糖よりも早い。各組織への取り込みはインスリンに依存せず、また、血糖にほとんど影響を及ぼさないため、糖尿病患者の糖質補給に有効。血中乳酸値が上昇しやすいので乳酸アシド-シスに注意。高尿酸血症にも注意が必要。

ソルビト-ル: 果糖の糖アルコ-ルで、肝で代謝されて果糖とマンニト-ルになるため、利尿作用がある。ソルビト-ルの代謝は果糖より遅いため、尿中排泄が多い。溶解時に清涼感があるため、食品添加物として使用される。腎でのシュウ酸結石(尿管結石になる)の形成や乳酸アシド-シスの危険性がある。

キシリト-ル: 食品中に存在するD-キシロ-スの糖アルコ-ルで、インスリン依存性がなく、ペント-スリン酸回路を経て肝臓で代謝される。このため、核酸や赤血球の合成に関与し、血糖値の上昇がない。虫歯予防の甘味料としてよく知られている。肝機能に負担をかける可能性があり、肝障害患者には注意を要する。高尿酸、乳酸アシド-シスの合併もある。単独ではエネルギー源となりえないが、グルコースとの併用で解糖系が円滑になるとされ、TPN製剤のアミノトリパやトリパレンはブドウ糖、フルクト-ス、キシリト-ルを4:2:1配合(GFX)されており、これらの合併症に気をつけなければならない。

 

マルト-ス: ブドウ糖が2個結合した二糖類で、体内でマルタ-ゼという酵素によってブドウ糖となって利用される。したがって、ブドウ糖と同量の投与で2倍のエネルギ-が投与できる計算になるが、実際には人体ではマルタ-ゼ活性が低いため代謝が遅く、投与速度が速いとほとんど尿中に排泄されてしまう。インスリンに依存性がなく、血糖値の上昇も少ない。
その他:

 

グリセロ-ル: 単糖類アルコ-ル(3炭糖)で、体内でグリセリンとアルコ-ルに分解される。脳浮腫治療薬と使用されるが、生食と同じNaCl(154mEq/l)を含有するために高Na負荷に注意を要し、マグネシウム(Mg)の低下や溶血、腎不全などにも注意が必要。また、利用率80%でエネルギ-を供給するので、血糖管理にも注意が必要。

 

マニト-ル: 単糖類アルコ-ルの1種で、昆布の甘みのもとであり、乾燥昆布の表面の白い粉です。アイスクリ-ムの増量剤もこれです。臨床的には血管内ボリュ-ムの上昇、血液粘調度の低下、脳浮腫予防に利用される。生化学的には不活性で全て尿に排泄されるため、エネルギ-源にはならない特徴があります。

 

乳糖(ラクト-ス): 2糖類の仲間で、腸粘膜のラクタ-ゼという酵素にて、グルコ-スとガラクト-スに分解され、吸収される。ちなみにガラクト-スも単糖類でエネルギ-源となりますが、酵素欠損症もあり、注意が必要です。経腸栄養の成分になります。肝臓の悪い方に投与はできません。

 

ショ糖(スクロ-ス): 2糖類の仲間で、腸粘膜のスクラ-ゼ(サッカラ-ゼ)により、グルコ-スとフルクト-スに分解され、吸収されます。経腸栄養の成分になります。

 

 

デンプン: 代表的多糖類で、理科の実験でもおなじみのデンプンです。多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子であり、唾液中のα-アミラ-ゼにてデキストリンとマルト-スに分解されます。

 

デキストリン: デキストリンとはデンプンが分解されて生成される多糖類で、腸粘膜中のイソマルタ-ゼにてグルコ-スに分解されます。栄養学的にはジャガイモのデンプン質を加工してつくられたD-グルコ-スを主成分とした食物繊維(多糖類)で水溶性です。腸内で食べ物の水分を取り込んで”ゲル化”するという特性があります。デキストリンは、安全性のみでなく、低粘性、低甘味、熱および酸に対する安定性、保存性などの物性にも優れているために広範囲の食品への応用が可能です。また、生理作用についても確認されており、整腸効果、インスリンの分泌を抑え血糖調節効果、ダイエット効果などもあります。最近はビ-ルにも含有した製品も発売されました。多くの経腸栄養剤の主糖質成分です。

 

セルロ-ス: 多糖類のセルロ-スは直鎖グルコ-ス多糖体で植物の細胞壁の成分であり、食物繊維とよばれるものの主成分です。セルロ-スは食物中に含まれていますが、消化しにくく、エネルギ-源としての利用はできません。消化管機能の維持や腸粘膜の保護、腸内細菌の活性化に有効です。他にフラクトオリゴ糖や大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などもあります。

 

おまけ

 

水溶性食物繊維: 小腸での栄養吸収を緩やかにすることによって、血糖値やコレステロールの上昇を抑制します。大腸菌に働き、プレバイオティクスとしての効果もあり、腸内細菌を整え排便をスムーズにします。

ペクチン(果実)、グルコマンナン(こんにゃく)、フコダイン(海草)など
不溶性食物繊維: 吸収力が強いため、便や腸内の有害物質を吸収して対外に排出する働きがあり、腸の動きを活発化して便秘にも効果がある。

セルロース、ペクチン(果実)、グルカン(きのこ)、キチン(甲殻)など