何科を受診するとよいか
扁桃炎は、耳鼻咽喉科または小児科、内科を受診します。内科の場合はクリニックでも構いません。ただし、腫れが強くて唾を飲み込むのもつらいという症状や、食事が十分にとれないような場合は総合病院の受診をおすすめします。
症状は?
扁桃炎の症状は、発熱・のどの痛み・喉の腫れ・首元のリンパ節の腫れなどが出てきます。熱は高熱が出て39℃を超える熱が出る場合もあります。扁桃炎は見た目に赤くはれて膨らみ、液が出ていることや白い苔のようなもの(白苔)がついていることがあります。
首のリンパ節が腫れている場合、外から触ったら痛みがあります。
痛みや腫れが強くなり、食事が十分にとれないという方は脱水症状(喉が渇く・体がだるい)が出ることがありますので、その場合には入院が必要となることがあります。
口を閉じることや開けることが難しい、唾を飲み込むことができずに垂れてしまう、というような時には扁桃炎から扁桃周囲膿瘍などのより重症な病態になっている可能性があるため、これらの症状に注意してください。
原因は?
細菌・ウイルスが原因になります。
細菌感染症では、溶血性連鎖球菌(溶連菌)・別名A群β溶連菌が治療を考えるうえで最大の問題菌になります。
EBウイルス
検査は?
溶連菌の迅速検査(Rapid antigen detection test )、または培養検査を行います。迅速検査は陽性であればかなりの確率で溶連菌と診断できますが、迅速検査でもまれに見逃してしまう場合がありますが、検査の精度はとても高い(感度は70-90%)ので、溶連菌感染ではないということを調べるにはとても有用な検査です。保険の関係で2つの検査を同時に行うことはできない場合もあります。
培養の方はすぐには結果はでません。数日ほどかかってしまいますが、精度はさらに高いので、臨床的に強く疑われる方や、子供や高齢者や免疫機能低下の方と接するような人では追加して行う価値が高い検査になります。
治療は?
溶血性連鎖球菌の場合には、抗生剤を使用することで治療までの期間が1日短縮できる、と言われています。また抗生剤の治療は急性リウマチ熱という怖い合併症の予防効果もあります。発症してから2日以内の治療が効果的とされています。
また、扁桃周囲膿瘍という扁桃炎が悪化し膿の塊をのどのところに作ってしまう病気への進展予防効果もあるとされています。
ウイルスによる扁桃炎の場合には、抗生剤は不要です。サイトメガロウイルス感染やEBウイルス感染などの場合には、抗生剤の種類によってはアレルギー反応が出やすくなります。(アモキシシリン®という抗生剤が有名)
日常生活での注意点は?
溶連菌感染の場合には家族内や学校での濃厚接触感染が、約35%ほどで起こるとされています。そのため感染予防(手洗い・うがい・近くにより過ぎないなど)を行いましょう。
抗生剤治療を行うと、他への感染予防にもなることが知られています。Pediatr Infect Dis J. 2015;34(12):1302.の研究では、111人の子供で、アモキシシリンという抗生剤を使用したところ、前日の夕方5時から内服したところ、次の日の朝には91%の子供で溶連菌迅速検査が陰性だった、というような報告もあります。
予後は?
放っておいても自然治癒で2-5日ほどで改善します。しかし、A群連鎖球菌(溶血性連鎖球菌)Streptococcus pyogenesや group A Streptococcus (GAS)とも呼ばれる菌の場合、抗生剤で治療を行った方が1か月後の合併症を減らせると考えられています。
ぜひ知っておいてほしい大事なこと
食事がとれない場合は、入院が必要となることがあります。点滴で脱水にならないように水分を補給し、点滴の抗生剤で治療を行います。食事がとれるばあいには外来で飲み薬の抗生剤で様子を見たり、そのまま抗生剤を使用せずに様子を見ます。
抗生剤が必要かどうかは、溶連菌が陽性かどうかできまります。
治療が終わり、時間が経った後に出てくる合併症の予防という目的で抗生剤が使用されるので、もし出された薬があれば、出された期間飲み切ってください。