安中散の効果・適応症

安中散は、胃下垂傾向のあるやせ型で比較的体力(胃腸)が低下した人の次の症状に適しています。
げっぷや食欲不振、吐き気などを伴う神経性胃炎、慢性胃炎、胃アトニー
成人では、1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。

 

 

神経性胃炎・慢性胃炎・胃アトニーへの安中散の効果

安中散は、体力がなく冷えがあるような人の胃痛・胸やけ・嘔吐に用いる処方です。ストレス性の胃部症状、特に胃痛に頻用されます。最近、よく話題になっている機能性胃腸症に使われる処方の一つでもあります。
慢性的に吐き気や嘔吐、胸やけ、胃痛があったり、ストレス性の胃痛がある場合に効果が期待できます。甘味好き冷え性がキーワードになります。構成生薬のうち5種はお腹を温める生薬になります。
他剤との使い分けでは、六君子湯は安中散より少し体力があるような人で冷えはさほどでなく、疲れやすい、元気がない、食欲不振などの時に用います。同じストレス性の胃腸障害でも、体力が中程度以上で、胃部のつかえ感、下痢時のゴロゴロ感があり、時に不安や不眠などの精神神経症状を伴う場合には、半夏瀉心湯が適しています。
体力がより低下している場合には人参湯が適しています。体力が中程度で消化不良で胃が張るタイプには平胃散が、体力が比較的あり、げっぷが見られる場合には茯苓飲が適しています。
体力が中程度で、症状が似ているものの、心窩部の圧痛や神経質で手足が冷えやすい人の慢性胃炎には、四逆散が適しています。

 

 

安中散の副作用・証が合わない場合の症状

副作用
安中散には、甘草が含まれています(1日量3包に1.0g)。そのため、偽アルドステロン症を起こす可能性があります。主な症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。主成分であるグリチルリチンは多くの食品などにも含まれているため、摂取量に注意する必要があります。
桂皮が含まれているため、発疹、発赤、掻痒などの過敏症状があらわれるおそれがあります。

 

証に合わない場合
安中散は温める作用のある薬なので、胃に熱を持っている場合は、合いません。例えば、急性の胃炎、急性の胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの炎症の強い熱性の症状が、不適になります。陳旧性の胃・十二指腸潰瘍には安中散を用いられることがあります。
それ以外であれば、虚証(体力気力胃腸の力が低下している)の薬であるため、証に合わないということはありません。胃腸の強さの有無が分からない場合、虚証の薬のほうが安全と言われているからです。

 

 

安中散の生薬の組み合わせと効能

桂皮(ケイヒ)、延胡索(エンゴサク)、牡蛎(ボレイ)、茴香(ウイキョウ)、甘草(カンゾウ)、縮砂(シュクシャ)、良姜(リョウキョウ)の7種で構成されています。
牡蛎と甘草以外は、胃を温める働きを示します。桂枝、良姜、縮砂、茴香は芳香性健胃に、延胡索は鎮痛に、牡蛎は胃酸を中和し鎮静に働く生薬です。また、桂枝、良姜、縮砂、茴香、延胡索は気剤と言われている生薬で、精神神経性の消化器疾患にも効果が期待できる生薬構成となっています。
良姜は生姜と類似の作用があり、より香りや味が良いものと言わていますが、生姜より鎮痛効果が高い作用をもっています。

 

 

安中散のまとめ

安中散は、慢性胃炎や神経性胃炎に用いられることが多い方剤になります。一般用医薬品で、他の製薬会社から別の名前で販売もされているほど使われています。
また、効能効果では言われていませんが、月経痛にも効果があると言われていて、当帰芍薬散で胃痛が起こるような場合に有効という報告があります。