柴胡桂枝湯の効果・適応症

柴胡桂枝湯は、体力(胃腸)が中程度で、発熱汗が出て、悪寒し、身体痛み、頭痛、はきけのあるものの次の諸症に適しています。
感冒・流感・肺炎・肺結核などの熱性疾患、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胆のう炎・胆石・肝機能障害・膵臓炎などの心下部緊張疼痛

 

成人では、1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。

 

 

熱性疾患への柴胡桂枝湯の効果

急性症では、体力が中程度~やや低下して、やや痩せ型の発熱数日後(感冒であれば2-3日後)に交互に起きる悪寒と発熱を目標とする。この場合、発汗・寝汗、頭痛、関節痛、心窩部のつかえ感、悪心・嘔吐、胸やけ、食欲不振などを伴う。

 
感冒の場合では、上記の通り柴胡桂枝湯は亜急性期(2-3日後)に使用します。

 

風邪の引きはじめは、体力に合わせて体力がある順から、麻黄湯、葛根湯、小青竜湯、麻黄附子細辛湯、香蘇散となり、数日たって症状がある場合は、体力中程度以下ヘ、口中不快や食欲不振がある場合は小柴胡湯、さらに食欲不振が強い場合は柴胡桂枝湯、続くような咳がある場合は麦門冬湯が適しています。

 

その後、体力がやや落ちた例で落ちた体力を補うには、補中益気湯が用いられます。

 

 

慢性疾患への柴胡桂枝湯の効果

柴胡桂枝湯を慢性の症状に使う際には、心窩部より季肋部にかけて苦満感を訴え、抵抗・圧痛(胸脇苦満)を認め、両側の腹直筋の緊張を目標とします。食欲不振、のぼせ、腹痛や、不安・不眠などの精神神経症状を伴う場合に適しています。
慢性の症状の中では、大きく消化器系疾患と精神神経領域とで使い方が分かれてきます。
消化器系疾患では、上腹部痛を伴う場合でよく用いられ、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、機能性胃腸症、過敏性腸症候群、胆石、膵炎、慢性肝炎に用いられます。
精神神経領域では、心身症、神経症、自律神経失調症などに用いられ、不安感やイライラなど精神的に不安定で、ストレスの影響を受けやすく、肩こりや頭痛、からだの痛みやしびれなど不定愁訴と言われるような症状に用いられます。
慢性症状に対しての類似処方の中での使い分けについては以下のようになります。

 
柴胡剤の中では、小柴胡湯は柴胡桂枝湯よりはやや体力があるタイプですが痛みや神経症状がある場合には使用しません。

 

大柴胡湯は体力があって胸脇苦満が強く、便秘がちの人でゆううつ感やイライラがある場合に使います。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯は柴胡桂枝湯よりは体力があるタイプで動悸などの症状が強く、不安・不眠など精神症状が強い場合に用いられます。

 

四逆散はストレスによる症状に使用し、特に手足の多汗があるような場合でに用いられます。柴胡桂枝乾姜湯は柴胡桂枝湯より体力が低下したタイプで、冷えが強く、より神経質な傾向に適しています。

 
柴胡剤以外では、消化器症状で、痛みよりも胃もたれや食欲不振が強い体力が低下しているタイプには六君子湯を、胃の症状以外に冷えが強く下痢傾向のものには人参湯を、みぞおちが硬く、つかえる感じが強いものには半夏瀉心湯を用います。

 

また、みぞおちの痛みが下から突き上げるような痛みで背中の冷感があるような場合は当帰湯が適しています。

 

 

柴胡桂枝湯の副作用・証が合わない場合の症状

副作用
柴胡桂枝湯は、間質性肺炎が生じる可能性があります。
その初期症状である発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこととあります。
この初期症状を感じるときには、速やかに柴胡桂枝湯の服用を中止して、ただちに医師へ連絡するということを覚えている必要があります。
柴胡桂枝湯には、甘草が含まれています(1日量3包に2.0g)。そのため、偽アルドステロン症を起こす可能性があります。主な症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。
肝機能障害や黄疸が現れることがあります。その他、過敏症、食欲不振、下痢、腹痛などが起こる可能性があります。

 

 

証に合わない場合

体力が中程度~やや低下した場合に用いられるため、証に合わない場合というのは言われておりません。

 

ただし、甘草が含まれているために、他剤との併用については注意が必要になります。血清カリウム値の変化や血圧の変化には注意が必要になります。

 
また、類似処方の小柴胡湯では、インターフェロンαとの併用による間質性肺炎の副作用が多く報告されているため、併用薬には注意をした方がいいでしょう。

 

 

柴胡桂枝湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか

柴胡(サイコ)、半夏(ハンゲ)、黄芩(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、大棗(タイソウ)、人参(ニンジン)、生姜(ショウキョウ)の9種で構成されており、柴胡を主薬とした柴胡剤の一つで、小柴胡湯の構成生薬に芍薬と桂皮を加えて配合比を変えた方剤です。

 

柴胡桂枝湯は、柴胡を主薬とした柴胡剤の一つで、主成分サイコサポニンのもつ抗炎症作用が期待されています。

 

また、抗潰瘍作用、肝障害抑制作用、膵炎抑制作用、活性酸素消去作用、消化管ホルモンに対する作用、免疫調整作用が認められています。
抗炎症作用の柴胡、痛みへは芍薬、甘草、生姜、鎮静・鎮痙作用を桂皮が示します。

 

肝機能に働く柴胡や黄芩、抗アレルギー作用を持つ生薬には甘草や大棗、吐き気を抑える働きがある生薬には、半夏や黄芩があります。抗潰瘍作用は、大棗と甘草が示します。

 

 

柴胡桂枝湯のまとめ

柴胡桂枝湯は、使いやすい処方としてよく使われているようです。
以前は、十二指腸潰瘍や胃潰瘍でも使われることは多かったようですが、現在は胃酸を抑える薬剤が登場したため、潰瘍への使用の機会は減っているようです。

 

風邪に対しては、漢方をよく使う医師は風邪をひいてから3-4日位までの悪寒が残りつつも胃が気持ち悪いとか、市販薬を飲んだ後も調子が悪いという時に適していると言われています。

 

また、体力が中程度に適していることと、ストレス社会の中での気鬱や不定愁訴に広く使いやすいと言われていることがよく使われる理由になっているようです。