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柴胡桂枝乾姜湯の効果・適応症
柴胡桂枝乾姜湯は、体力(胃腸)が弱く、冷え症、貧血気味で、動悸、息切れがあり、神経過敏のものの次の諸症に適しています。
更年期障害、血の道症、神経症、不眠症
成人では、1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。
婦人科症状への柴胡桂枝乾姜湯の効果
柴胡桂枝乾姜湯は、柴胡剤の中でも体力が低下した例に用いられます。体格はやせ型で体力が低下し、貧血傾向のに人に対して使用目標とします。
柴胡桂枝乾姜湯は、更年期障害と血の道症に対してよく使われる処方です。血の道症とは、更年期障害と同様の状態をさす場合が多いですが、月経時や出産後の不安定な女性の心身に起こる様々な変調を含む、より広い概念と考えられています。
柴胡桂枝乾姜湯を体力が低下した更年期障害を含む不定愁訴症候群に使用した結果、8割程度に有効だったという結果が出ていいます。
柴胡桂枝乾姜湯は、精神安定作用のある牡蛎が入り、ストレスを軽減させる柴胡が多く含まれています。また春先になると頭痛や目の奥が痛むという症状が出やすいようです。
柴胡桂枝乾姜湯は、時に当帰芍薬散と併用して用いられることがあります。両剤とも冷える傾向があって職場では元気に仕事をこなすような、ストレスを発散できずにため込むタイプの働く女性に適しているようです。
他剤との使い分けとしては、柴胡桂枝乾姜湯は、気の異常に使用されるのに対し、当帰芍薬散は、同じような体力が低下して冷えるものに使用されますが、足がむくみやすく、胃のあたりで水分が動く音を聞くことが多いような人(血・水の異常)に適しています。
対して加味逍遙散は、体力が中程度で、肩こりやのぼせや不眠があり、訴えが絶えないタイプに用いられます。どちらかというと、ストレスを受け流すことが得意でなく、他人を攻撃するようなタイプに用いられるようです。
なお、柴胡には、サイコサポニンという成分があります。その中で酸性条件下ではサイコサポニンa、dがbへと変化することが確認されています。炎症に用いる柴胡剤はサイコサポニンbが多く、精神神経症状に用いる柴胡剤ではbは少ないことがいわれています。
柴胡剤の中で代表的な小柴胡湯は、抗炎症効果が期待されている方剤ですが、その煎液のPHが5.2と酸性であり、その状況ではサイコサポニンのa、dがサイコサポニンbに変化して多くなることが分かっています。
一方、牡蛎が入ってPHが6.9と中性に近い柴胡加竜骨牡蠣湯では、aからbへの変化が抑えられ、抗炎症作用より精神神経症状への作用が出現すると推定されています。
柴胡桂枝乾姜湯も牡蛎が入っており、その煎液はPHが6.5であることから精神神経症状への作用が期待できると考えられます。
精神神経症状への柴胡桂枝乾姜湯の効果
柴胡桂枝乾姜湯にも含まれる生薬の柴胡は、精神神経症状に対しても用いられ、精神神経用薬として分類される漢方の処方のうち、42%に含まれていると言われています。
また、柴胡桂枝乾姜湯に含まれている牡蛎も精神神経症状に作用すると考えられています。
柴胡桂枝乾姜湯は、柴胡剤の中でも体力が低下した例に用いられます。体格はやせ型で体力が低下し、貧血傾向のに人に対して使用目標とします。
自律神経失調症や抑うつ状態、不眠症に用いられており、中でも抑うつ状態の代表的な処方の1つになっています。
類似症状における使い分けについては、柴胡桂枝乾姜湯は、体力が弱い傾向で、冷えや疲労、動悸、微熱などを訴えるタイプに有効であり、同じように不定愁訴や自律神経失調症などに用いられる加味逍遙散は、体力が中程度で、のぼせ、冷え、いらいら、肩こりなどの不定愁訴を訴えるタイプに有効とされています。
柴胡加竜骨牡蛎湯は柴胡桂枝乾姜湯よりは体力があるタイプで動悸などの症状が強く、不安・不眠など精神症状が強い場合に用いられます。
大柴胡湯は体力があって胸脇苦満が強く、便秘がちの人でゆううつ感やイライラがある場合に使います。四逆散はストレスによる症状に使用し、特に手足の多汗があるような場合でに用いられます。
柴胡桂枝乾姜湯の副作用・証が合わない場合の症状
副作用
柴胡桂枝乾姜湯は、間質性肺炎が生じる可能性があります。
その初期症状である発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと、とあります。
この初期症状を感じるときには、速やかに柴胡桂枝乾姜湯の服用を中止して、ただちに医師へ連絡するということを覚えている必要があります。
柴胡桂枝乾姜湯には、甘草が含まれています(1日量3包に2.0g)。そのため、偽アルドステロン症を起こす可能性があります。主な症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。
肝機能障害や黄疸や過敏症が現れることがあります。過敏症:発疹、発赤、痒みがあらわれたときには使用を中止して医療機関を受診してください。
証に合わない場合
体力が中程度~やや低下した場合に用いられるため、証に合わない場合というのは言われておりません。
ただし、甘草が含まれているために、他剤との併用については注意が必要になります。血清カリウム値の変化や血圧の変化には注意が必要になります。
また、類似処方の小柴胡湯では、インターフェロンαとの併用による間質性肺炎の副作用が多く報告されているため、念のため併用薬には注意をした方がいいでしょう。
柴胡桂枝乾姜湯の生薬の組み合わせと効能
柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)、栝楼根(カロコン)、桂皮(ケイヒ)、牡蛎(ボレイ)、甘草(カンゾウ)、乾姜(カンキョウ)の7種で構成されており、柴胡を主薬とした柴胡剤の一つです。
柴胡剤の一つ、小柴胡湯が主成分のサイコサポニンによる抗炎症作用を期待しているのに対し、柴胡桂枝乾姜湯は、サイコサポニンのもつ精神神経症状への作用が期待されています。
柴胡や桂皮の中枢神経系への作用、牡蛎の鎮静作用や利尿作用、乾姜と甘草は体を温める効果があり、また桂皮、甘草、牡蛎の組み合わせは、精神症状に作用するということが言われていることから、冷えがあるようなやや虚証の精神神経症状に対して効果を発揮していると考えられます。
柴胡桂枝乾姜湯のまとめ
柴胡桂枝乾姜湯は、比較的虚証の人で広範囲の症状に使うことができますが、汎用されることは無かったようです。
今後、現在の高齢化やストレス社会、女性の社会進出もあり、使用の機会が増えていくのではないかと考えられています。