このページの目次
黄連解毒湯の効果・適応症
黄連解毒湯は、比較的体力があり、のぼせ気味で、いらいらする傾向のあるものの次の諸症に適しています。
喀血、吐血、下血、脳溢血、高血圧、心悸亢進、ノイローゼ、皮膚掻痒症、胃炎
成人では、1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。
循環系、皮膚系への黄連解毒湯の効果
黄連解毒湯は首から上の熱を取り除く働きがあります。体力が中程度以上の人で、のぼせ気味で、顔面紅潮し、不安、不眠、いらいらなどの精神神経症状を訴える例の、主として慢性的な症状に用いていきます。
心窩部に膨満感と抵抗・圧痛を軽度に認める場合や喀血、吐血、下血など出血を伴う場合に適しています。黄連解毒湯には、活性酸素消去能や抗菌力、免疫にも作用することが報告されています。
循環系に対する作用では、高血圧の随伴症状に対する改善効果が認められており、血小板凝集能と血小板活性化の抑制効果が報告されています。また、脳血管障害後の後遺症に対する改善効果が報告されています。
胃粘膜障害に対する作用もわかっています。抗炎症作用があり、炎症や充血などがあるような面疔やニキビにも効果があり、掌蹠膿疱症に対する改善効果の報告があります。
高血圧に対しての他剤との使い分けでは、黄連解毒湯は赤ら顔でめまいなどを伴い、気分が高ぶりやすく、時に焦燥感に駆られるような高血圧に有効といわれています。
精神症状が前面に出るような高血圧では柴胡加竜骨牡蠣湯が、頭痛やめまい、肩こりにいらいらが強い体力が中程度以下の高血圧には釣藤散が適しています。
使用目標が似ているものの便秘を伴う場合は三黄瀉心湯が適しています。
皮膚疾患では、掻痒症に対しては、抗ヒスタミン剤と同等の効果を示したという報告があります。
痒みに対して使うことが多く、アトピー性皮膚炎の赤みが強くて痒みのあるタイプに使われることがあります。
痒みに対しても腫れて赤みを伴うような痒みに黄連解毒湯が適しているといわれていますが、赤みが乏しく乾燥してかゆい体力中程度以下の場合は当帰飲子、温清飲が適していると言われています。
精神神経系への黄連解毒湯の効果
黄連解毒湯は、体力が中程度以上の人の、顔はほてり気味でつまらないことが気にかかっていらいらする例に適応されます。
これまで黄連解毒湯の中枢作用についての研究から、マウスにおいて抗ストレス作用や強迫性障害の行動抑制作用が認められています。
これらは、主に構成生薬である黄連の含有成分による脳内GABA代謝系の抑制とGABA(A)受容体を介するGABA関連因子によるものであることが示唆されています。
最近では、慢性期脳血管障害症例に対して用いられ、意欲・自発性低下、情緒障害、幻覚や妄想などの精神症状および頭重感、めまい、のぼせ等の自覚症状の改善が見られており、これらが従来の脳循環代謝改善薬をしのぐ効果が認められているとする報告があります。
類似処方との使い分けとして、黄連解毒湯が体力中程度以上の赤ら顔のイライラした不安や不眠などを訴える精神神経症状に用いますが、便秘傾向がある場合は三黄瀉心湯を用います。
体力が中程度でのぼせ傾向もなく精神神経症状が軽度の場合は半夏瀉心湯を、肩こりや逆上したりなどが時に見られ対象が似ているものの腹部や肋骨弓下部の圧痛を認める場合は柴胡加竜骨牡蠣湯を、体力が低下した怒りを覚えやすい傾向のあるもので神経が高ぶり不眠を訴える場合には抑肝散が適しています。
黄連解毒湯の副作用・証が合わない場合の症状
副作用
黄連解毒湯は、間質性肺炎が生じる可能性があります。
その初期症状である発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこととあります。
この初期症状を感じるときには、速やかに黄連解毒湯の服用を中止して、ただちに医師へ連絡するということを覚えている必要があります。
肝機能障害や黄疸が現れることがあります。肝機能の検査値の上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止して、適切な処置を行うこと、とあります。
黄連解毒湯は、山梔子が含まれているため、長期投与により腸間膜静脈硬化症があらわれることがあります。
腹痛、下痢、便秘、腹部膨満等が繰り返しあらわれた場合、又は便潜血陽性になった場合には投与を中止し、CT、大腸内視鏡等の検査を実施するとともに、適切な処置を行う必要があります。なお、腸管切除術に至った症例も報告されています。
その他、過敏症が起こる可能性があります。
証に合わない場合
黄連解毒湯は体力が中程度以上に対して用いられます。著しく体力が衰えている患者では、副作用があらわれやすくなり、その症状が増強される恐れがあります。
他の漢方製剤を併用する場合は、含有生薬の重複に注意が必要です。
黄連解毒湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか
黄芩(オウゴン)、黄連(オウレン)、山梔子(サンシシ)、黄柏(オウバク)の4種で構成されており、黄連の含有成分には抗潰瘍・胃液分泌作用、抗炎症作用、抗菌作用、血圧降下作用があり、黄芩は下痢や腹痛を直す作用があります。
黄柏は健胃、整腸作用、抗菌作用や抗炎症作用があります。山梔子は、鎮静、消炎、解熱、止血などに対して作用が認められています。
様々な研究から、構成生薬のうち黄柏に最も顕著な降圧作用が認められ、血管弛緩作用は黄芩、黄連、黄柏で認められています。また、同じく黄芩、黄連、黄柏が抗菌活性示し、山梔子、黄連、黄芩に抗凝固作用が認められるとする報告があります。
黄連解毒湯は冷ます生薬しか配合されていないため、短期で使用するか、長期に使用する場合は、温める生薬を加えると良いとされています。
黄連解毒湯のまとめ
黄連解毒湯は、脳血管障害後などの精神神経症状の改善に期待が持たれている方剤になります。
市販のもので一般的に使用する場合には、主に肌トラブルに使用されており、口内炎がある人、のぼせやすい人、肌に炎症があって赤くなりやすい人、熱がこもっているタイプに良いとされています。
赤みを伴った痒みに良いと言われていますが、冷ます生薬しか使われていないため、使用する際は短期間の使用で様子を見ることが大切だと思われます。