半夏厚朴湯の効果・適応症

半夏厚朴湯は、気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症に適しています。
不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症
成人では、1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。

 

 

不安神経症等の神経性症状への半夏厚朴湯の効果

半夏厚朴湯は、体力が中程度の神経質・几帳面傾向があり、耳鼻科的に器質的異常がないものの、咽喉・食道がふさがる感じや、咽喉に球状のものがつかえる感じ(いわゆるヒステリー球)がする人に用いられます。

 

またパニック症状を緩和する処方として知られています。

 

半夏厚朴湯に関する研究において、半夏厚朴湯に含まれる成分がストレス反応を軽減して、脳内のセロトニンやドパミンの増加をもたらすことが報告されています。

また、半夏厚朴湯に含まれる蘇葉には、抗うつ・抗不安作用を示す成分が含まれていることもわかっています。
他の漢方方剤との使い分けとしては、半夏厚朴湯は喉にものが詰まったような感じなど、喉の違和感が特徴的です。

 

加味逍遙散は、抑うつ的な状態、神経症傾向は似ているものの、症状が次々と変化し、ホットフラッシュや発汗、いらいらがある場合に適しています。
抑肝散または抑肝散加陳皮半夏では、神経症傾向で不眠があり、怒りっぽく感情の変動が大きい場合に適しており、胃腸症状が併発する場合は、抑肝散加陳皮半夏が適しています。
体力がやや低下して、めまいや立ちくらみや動悸、のぼせが見られる場合には苓桂朮甘湯が適しています。
柴胡桂枝乾姜湯は、神経質で抑うつ傾向があり、体力が低下した口の渇きや不眠、動悸、発汗などが見られる場合に適しています。
虚弱体質の場合は、桂枝加竜骨牡蛎湯が適しており、神経質でやや激しい動悸が見られる場合に適しています。
胃腸が虚弱な場合で、抑うつ傾向、動悸、不眠がある場合は加味帰脾湯が適しています。
体力が中程度以上で動悸、頭痛、高血圧などを伴う場合には、柴胡加竜骨牡蠣湯が適しています。

 

嚥下反射・咳反射改善への半夏厚朴湯の効果

脳血管性障害などにより嚥下反射や咳反射中枢の機能が低下することで、誤嚥性肺炎が起こることが知られています。

 

半夏厚朴湯は、嚥下反射や咳反射の改善に有効であると示されており、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」では、「高齢者に有用性が示唆される我が国の医療用漢方製剤のリスト」に誤嚥性肺炎既往例に対する半夏厚朴湯として記載がされています。

 

脳で産生されるドパミンおよびドパミン刺激により咽頭や気管の粘膜に放出されるサブスタンスPという物質の減少が、咳反射や嚥下反射が低下する要因と考えられており、研究により半夏厚朴湯が低下したドパミン合成を増やしてドパミン濃度を上げ、減少したサブスタンスP分泌を活性化してサブスタンスPを増やして嚥下反射や咳反射を改善させる可能性が示されています。

 

 

半夏厚朴湯の副作用・証が合わない場合の症状

副作用
半夏厚朴湯は、過敏症が起こる可能性があります。発疹、発赤、そう痒などがあらわれた場合には、使用を中止してください。

証に合わない場合

体力が中程度に対して用いられます。経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合は継続投与を避ける必要があります。
他の漢方製剤を併用する場合は、含有生薬の重複に注意が必要です。

 

半夏厚朴湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか

半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)、厚朴(コウボク)、蘇葉(ソヨウ)、生姜(ショウキョウ)の5種で構成されており、小半夏加茯苓湯に厚朴と蘇葉を加えたもので、小半夏加茯苓湯は吐き気がある場合に良く用いられ、悪阻によく用いられます。
生姜は発汗作用、健胃作用があり、半夏は制吐作用、鎮静作用などがあります。

茯苓には、利尿作用、滋養作用、鎮静作用があることが知られています。

厚朴は中枢性の筋弛緩作用、抗ストレス性潰瘍作用、抗アレルギー作用が、蘇葉には中枢性抑制作用、抗アレルギー作用が知られています。
この5種類が組み合わさり、半夏厚朴湯は半夏が中心となって体内にたまった水分を除去して、吐き気などの消化器症状の改善効果を示す以外にも、厚朴と蘇葉が中心となって、不安に関連した筋緊張を緩和し鎮静作用を発揮していくと考えられています。

半夏厚朴湯のまとめ

半夏厚朴湯は、元来の不安神経症状や不眠の改善だけでなく、その嚥下反射改善や咳反射改善効果が知られてきたことから、パーキンソン症候群や脳血管障害後の患者、高齢者の誤嚥性肺炎の予防に有用性があると言われています。
半夏厚朴湯は、市販薬でも手に入ります。別の名前でも販売されていますが、理由がわからない喉のつかえ感などがあるストレス性の症状を目標に販売されています。目標の体力は中程度なので使いやすい漢方薬であると考えられます。